春先に、小さなお子さんが鼻水やくしゃみをすると、「うちの子も花粉症かもしれない」と心配される保護者の方もいらっしゃいます。しかし、医学的には花粉症の発症は一般的に2歳以降とされており、生後10カ月未満の乳児が花粉症を発症することは、前年に花粉に触れていないため、理論的に考えにくいのです。
また、通年性アレルギー性鼻炎についても注意が必要です。これは家のホコリの中に含まれるダニやペットなどのアレルゲンに反応し、一年を通じて繰り返し鼻症状が出る病気ですが、その診断には、少なくとも3カ月以上、通常は6カ月以上にわたり症状が持続または反復していることが必要です。このため、生後3~6カ月未満の乳児では、診断そのものが医学的に成立しにくいとされています。
乳児の鼻水や鼻づまりは、実際には風邪や空気の乾燥、冷気、授乳後のミルクの逆流、泣いた後の粘膜の腫れなど、さまざまな要因によって起こります。乳幼児は鼻の穴が小さく、粘膜も敏感なため、少しの刺激でも鼻が詰まりやすいのです。これらは必ずしも病気ではなく、自然な反応であることも少なくありません。
こうした場合には、室内の湿度を50%程度に保ち、鼻水が多いときは、こよりや電動吸引器でやさしく吸い取ると、呼吸が楽になることがあります。寝かせ方を工夫して頭を少し高くしたり、お風呂の蒸気で鼻の通りをよくしたりするなど、無理のない範囲でできる対処を心がけましょう。
また、あわせて注意したいのは、風邪様症状に対して安易に抗菌薬を使ってしまうことです。特に2歳未満の乳幼児において、不要な抗菌薬の使用は、その後のアレルギー疾患の発症リスクを高めるという研究報告が国内外で多数あります。抗菌薬は細菌感染に対して有効な薬ですが、ウイルスによる風邪には効果がなく、使う必要がないケースがほとんどです。
乳児の鼻水や鼻づまりは、多くの保護者が経験する日常的な症状です。過剰な不安や不要な治療を避けるためにも、正しい知識をもって冷静に観察し、必要があればかかりつけ医や専門医に相談しましょう。(市民タイムス2025年4月24日付けコラム「アレルギー最前線」から、改題して転載。転載許諾済み)